アナボリックステロイド—筋肉増強剤とは何か—

こんにちは!兄者です。
さて、今日はアナボリックステロイド(AAS、筋肉増強剤)ってなんぞや?ってことについて説明しようと思います!
と、いうのも

「プロテインって筋肉増強剤っしょー?」
「筋肉増強剤ってプロテインの強化バージョンってことでしょ?」

という話をたまに見るので、これはプロテインとの違いを説明しなくてはならない!と思った次第です。
まずプロテインとは何か?について簡単に復習しましょう。
タンパク質とアミノ酸はそれぞれ

タンパク質=レゴの完成品

アミノ酸=レゴブロック

と例えることができます。
この際レゴブロックに相当するのが20種類のアミノ酸

 

そしてこれら食品から吸収されたアミノ酸(レゴブロック)が数珠つなぎになって連なっていくことでタンパク質(レゴの完成品)が完成します。

 

そして我々の身体は、吸収したアミノ酸からおよそ100万種類以上ものタンパク質を体内で合成すると言われています。
それらのタンパク質には1つ1つ大事な機能が備わっています。

グルコースを分解するタンパク質
インスリンを受容するタンパク質
タンパク質を合成するタンパク質
DNAを合成するタンパク質
体内時計をコントロールするタンパク質
目で光を受容するタンパク質
鼻で匂いを受容するタンパク質
、、、

挙げていったらキリがありません。
これらのタンパク質が常に身体中すべての細胞で合成されています。
あれ?じゃあそんな多くの種類のタンパク質のうち、いつどれを細胞内で作るのかって、どのようにコントロールされてるの?
ってなりますよね。

実は細胞の中には核と呼ばれる書物庫のような役割を果たす区画があり、その書物庫の中にタンパク質の設計図(つまりレゴの設計図)が大量に入っています。
それを模式図で現しました。

青い四角で囲まれた部分が、1つの細胞をあらわしています。
細胞の中には丸い核と呼ばれる部分があり、その核の中にタンパク質の設計図(レゴの設計図)が大量に入っています。
そして、細胞が「このタンパク質(レゴの完成品)作りたい」となると、その書物庫から設計図をコピーして書物庫の外に放出します。
そしてその設計図コピーを見ながら細胞がアミノ酸から設計図に対応したタンパク質を合成するのです。
細胞は書物庫の中にある設計図から直接タンパク質を作ることはできず、そのコピーを作って外に放出しないとタンパク質を作ることができないというところがキーです。
そして、プロテイン、EAA、BCAAなどのサプリはこのタンパク質を作る原料です。
もちろんこの原料が足りないと、タンパク質合成が効率良く進まないので、食事で摂取し足りない栄養素をサプリで補給するわけです。
(アミノ酸自体がタンパク質合成を促進する役割もあったりと、代謝はもっと複雑ですがものすごく簡略化しました)

なるほど!すると書物庫内の設計図一枚からコピーが一枚作られるの?
それから、どの設計図をコピーして、どれはしないっていうのはどうコントロールされるの?
となりますよね。
それをコントロールするのがホルモンの役割です。

テストステロンやインスリンなど、もしかしたら名前を聞いたことがあるかもしれないこれらの物質はホルモンと呼ばれます。
ホルモンは身体の状態(栄養状態など)に合わせて体内での分泌量がきっちりとコントロールされています。
これらの分泌されたホルモンが細胞内に入ったり、細胞外にくっついたりすることにより、書物庫の中のどの設計図をコピーするか、そしてどれぐらいの量のコピーを作るかをコントロールします。
コピーされた設計図の数が多いほど、多くのタンパク質がその設計図コピーから合成されます
ホルモンには、筋肉を増やす方向に設計図のコピーをコントロールするものもありますし、筋肉を分解する方向にコントロールするホルモンもあります。
もう一度言いますが、このホルモンというのは身体の状態に合わせてきっちりと分泌量がコントロールされています。
この分泌量のコントロールが失われると、様々な病気になったり体調に支障をきたします。
さて、タンパク質がどのように細胞で合成されるのか、プロテインとは何か、ホルモンとは何か、を理解して、やっと筋肉増強剤とは何かを理解できます。

 

筋肉増強剤とは、簡単にいえばホルモンの”真似”をする薬です。
経口投与、もしくは注射された筋肉増強剤はホルモンのように細胞内の書物庫内に入って行き、筋肉合成に使われるタンパク質の設計図のコピー数をガッツリ増やします。
また、同時に筋肉分解を促進するホルモンの働きを阻害することで筋肉を増やします。
要するに、体外からホルモンバランスを筋肉合成方向にガッツリとシフトする役割を果たします。
プロテインやBCAAなどの栄養と違い、身体のタンパク質合成経路そのもののスピード/強さを変えるので変化は劇的です。
筋肉はじゃんじゃんつくようになりますし、脂肪もグンと減ります。

以上、プロテインとアナボリックステロイドの違い、わかったでしょうか?
簡単に言えば

プロテイン・BCAA・EAAは”栄養”で、アナボリックステロイドは筋肉を大きくする”薬”

ということです。
ではなぜ筋肉増強剤はスポーツにおいてドーピングとして禁止されるのか?
1つは単純に不公平だから、という理由です。
筋肉増強剤を使うと圧倒的に筋肉量が増え脂肪量が減るので、使っている人と使っていない人で差が出るのは当然だからです。
もう1つには副作用があります。
先ほど述べたように、体内のホルモンバランスは身体の状態に合わせてきっちりとコントロールされています。
よってそのホルモンバランスを崩すと、身体のどこかに支障をきたします。
知られている副作用としては

・心血管病
・男性の胸部発達
・女性の男性化
・男女ともに一時的な不妊
・思春期での骨の成熟促進による発育障害や、性徴の異常発達

などがあります(ヴォート生化学より)。
よってステロイドは禁止薬物として厳しく規制されているのです。

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