研究結果の ”伝え方” の大切さ

今日は筋トレ・栄養・サプリなどの情報を発信する側として研究結果の ”伝え方” の大切さについて書きたいと思います。
情報を発信する側にとってはもちろん、受け取る側にとっても正しく情報を受け取り解釈するための大切なポイントが多く含まれているのでぜひ最後まで読んでみてください。

論文というのは1本あたり1,000-4,000語程度の英語で書かれています。
それらを読み手がわかるようにTwitterや短い日本語の記事でまとめるのは結構考えが必要な作業です。
ポイントなどは英語150語程度の要旨(Abstract)にまとまっていますが、それだけでは足りない情報があることがほとんどなので、やはり本文や図をみてきちんと論文の内容を確認する必要があります。
そうした上で情報発信をするのですが、伝え方1つで受け取る側の解釈が全く違うものになってきます。

例えばこの論文の研究結果を

Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion: The DIETFITS Randomized Clinical Trial.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29466592

①「ローカーボダイエット vs ローファットダイエット、どちらも効果は一緒!」

②「BMI = 28-40の被験者をローカーボ or ローファットダイエットの2グループにわけて、体組成などを1年間にわたって記録。 ローカーボは平均PFC = 約23% : 45% : 30%、ローファットは平均PFC = 約21% : 29%: 48%の食事。結果、平均体重減少は両グループとも5-6 kg、体脂肪率の減少は-2%で差はなかった。」

と解説するのでは全くもって読者の読み方が変わってきます。
前者では「ケトジェニックダイエットをしても脂質を減らすダイエットと変わらないのか!!」と間違った解釈をしてしまうかもしれません。
後者のようにきちんと説明すれば「肥満の人が炭水化物少なめ、もしくは脂質少なめにしてもどっちもダイエットの効果は変わらないのか」と解釈することができます。

もう1つ例をみてみましょう。例えば下の論文を

High-Protein Intake during Weight Loss Therapy Eliminates the Weight-Loss-Induced Improvement in Insulin Action in Obese Postmenopausal Women.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27732859

①「高タンパク質ダイエットはインスリン抵抗性を改善しない」

②「高タンパク質ダイエットは筋肉量の維持には役立つが、インスリン抵抗性を改善しない」

③「平均60歳のBMI = 35前後の肥満女性に高タンパク質ダイエットと普通ダイエットをさせ比べたところ、高タンパク質ダイエットは筋肉量の維持には役立つが、インスリン抵抗性を改善しないことがわかった」

④「平均60歳のBMI = 35前後の肥満女性に、1日体重 x 1.2 gのタンパク質を食べる高タンパク質ダイエット、もしくは1日体重 x 0.8 gのタンパク質を食べる普通ダイエットをさせた。なおカロリー摂取量が一緒になるように炭水化物と脂質の量を調整した。体重の10%のダイエットに成功したところで体組成などを比較した結果、高タンパク質ダイエットは普通ダイエットに比べて筋肉量の低下を45%も防げたが、インスリン抵抗性を改善できなかった」

と伝え方を変えると読者の受け取り方が全くもって変わります。

一番最初の「高タンパク質ダイエットはインスリン抵抗性を改善しない」という説明だけで終えてしまうと、まるで「減量期に高タンパク質食にするとインスリン感受性がさがるのか!?」などと解釈してしまうかもしれません。
「高タンパク質ダイエットは筋肉量の維持には役立つが、インスリン抵抗性を改善しない」と説明された場合でも「減量期に高タンパク質食にすると筋肉量は維持できるがインスリン感受性が下がる諸刃の剣なのか…」となってしまいます。
やっと「平均60歳のBMI = 35前後の肥満女性に高タンパク質ダイエットと普通ダイエットをさせ比べたところ、高タンパク質ダイエットは筋肉量の維持には役立つが、インスリン抵抗性を改善しないことがわかった」まで説明されたところで、「なんだ凄い肥満の女性のダイエットの場合か、これはボディメイクの減量とは話がまた違うな」とこの研究の内容を把握し始めることができます。
さらに最後の例のように具体的な数字まで入れれば、なお勘違いが起こることなく研究結果を解釈することができます。

このように情報発信の仕方次第で読者の解釈は全く違うものになってしまうのです。

しかし上の例2つを見ればわかるように、具体的な内容がしっかりと書いてある文章は、頭を働かせながら読まないと理解ができないので、読者にとっては辛いものかもしれません。
確かに夜寝る前にスマホでTwitterをボーッと眺めているときにこんな文章は読みたくはないと思います。
しかし、それでも情報を正しく伝えることはとても大切です。
また、読者としては”これは有益な情報では?”とふと思ったときに、脳みそのスイッチをONにして考えながら文章を読むことができれば学ぶことは増えますし、賢く情報を取り入れることができると思います。

そこで最後に、研究結果を伝える側として僕らがとても大事だと思うポイントを3つ書きます。
これは伝える側だけでなく、受け取る側も必要な情報として理解していただけると筋トレ・栄養・サプリなどの情報を見た際に正しく解釈ができると思います。

1、元の論文の引用をする。

よく「ハーバード大の研究によると」、「東大の研究によると」などと論文や記事の引用がされずに結果と解釈だけ書いてあることがあります。
こういった情報を見つけたときは100%嘘だと思っていいでしょう。そもそも研究の価値は大学名では決まりません。

2、被験者が誰なのかを書く。

上の例で述べたように被験者が誰かというのは大事なことが多いです。
筋トレ・栄養・サプリなどの論文は「健康でアクティブな成人男性」が対象のことがほとんどなのでその場合は省くことも多いですが、例えば「高齢者」が対象で行われた実験の場合は若い男性・女性には当てはまらないことが多いので気をつけなければいけません。他にも、例えばトレーニング強度に関する論文の際はトレーニング未経験者とトレーニングを積んだ人で結果が異なるので気をつけなければいけません。
このように被験者が誰かということは非常に大事です。

また、被験者が”人間でない”ときも気をつけなければいけません。
例えばマウスやラットで栄養やサプリの効果を試した実験の場合は、人間でも当てはまる可能性はありますが、高いとは言えません。

3、大事な数字は書く。

キーとなる数字はきちんと提示しないと誤解を生む可能性があります。
例えば先ほどのローカーボ vs ローファットの記事でも、ちゃんと「どれぐらいローカーボなのか」という数字を提示すればケトジェニックと勘違いすることはありません。
また、例えばプロテインにロイシンを入れたら筋肉合成刺激効果が上がったという論文がありますが、この研究ではプロテインわずか10 gにロイシンを足しています。もしみなさんが一度に摂取するであろう量の、30-40 gのプロテインを摂取していたら結果が大きく変わってくるはずです。
このように、具体的な数字を提示することでより正確な情報を伝えることが大事なのです。

こういったポイントに注意しながら僕らも情報発信を続けたいですし、みなさんも情報発信をするのであればおさえていただけると読者が助かると思います。
また、読者の方々も上記のようなポイントがちゃんと提示されているかをみた上で、研究の紹介などを読んでみてください。
被験者が誰がとか、数字がなんだとか、確かに読んで考えるのは面倒な作業ですが、これらを怠っていると間違った情報をインプットしてしまう可能性があります。注意してみましょう。

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