NOブースターのすベて②:NO3の摂取、何に効くのだろう?

久しぶりの更新になります。
前回の記事、NOブースターのすべて①:NOが体内で果たす役割とその合成経路

NOブースターのすべて①:NOが体内で果たす役割とその合成経路

に引き続きNOブースターシリーズです!

今日の話題は「NO3の摂取、何に効くのだろう?」です!
NO3を摂取すると身体の中でNOが生成され、様々な生理機能を果たすという話を前回しました。今日は

  • NO3は何に効いて何に効かないのだろう?
  • NO3の摂取量はどのくらいが最適?
  • NO3が多く含まれている食材は?

という流れで話をします!

NO3は何に効いて何に効かないのだろう?

①NO の血管拡張作用により血流が増加し、運動パフォーマンスが上がるという説

NO3の摂取によって運動持久力が上がることが多くの実験で示唆されています。

(Jones et al, 2018をもとに作成 (21))

上の図は持久系の運動に対し、NO3を摂取したときと摂取していないときでパフォーマンスがどう変わったかを調べた20本近くの論文の結果をまとめたものです (1-20)。
横軸はランニングやサイクリングなどのタイムがどれだけ伸びたかを%で表しています。
青い棒グラフは運動前にNO3を摂取したグループとプラセボを摂取したグループを比較した結果、赤い棒グラフは日々NO3を摂取していたグループとプラセボを摂取していたグループを比較した結果を示しています。

グラフの下1/3をみればわかるように、トレーニングを普段からしていない人、もしくは適度に運動をしている程度の人にとっては、NO3の摂取により直前の摂取・普段からの摂取にかかわらず運動持久力を上げる効果が出ていることがわかります。

一方グラフの上2/3をみると、すでにかなり運動経験を重ねている人やアスリートにとっては効果が薄いことがわかります。NO3の摂取タイミングにかかわらず、パフォーマンスが上がったという結果と下がったもしくは効果がなかったという結果が半々ぐらいになっています。
これはつまり、運動経験をすでにかなり重ねている人は、エネルギーの利用効率がすでに上がっており、NO3でそれ以上ブーストできないかもしれないということです。
しかし赤い棒グラフだけに注目すると、効果が出ているようにも見えます。
エリートアスリートや運動経験をすでにかなり重ねている人でNO3摂取によって運動持久力を上げたい場合は、普段からのNO3摂取が必要かもしれません。

さてこの「エリートアスリート」の基準としてはVO2 peakと呼ばれる値が60 mL/kg/minの人を指すようです。
こんな数字言われてもわからないと思うかもしれませんが、だいたいVO2 peakが60 mL/kg/minの人というのはマラソンを2時間45分程度で走れるぐらいの能力ということです(ものすごい速い!)

以上のことを考えると、ほとんどの人がNO3の摂取によって「運動持久力の向上」が見込める可能性があります。

ではNO3はスプリントやパワーにもプラスの効果があるのでしょうか?

これらの研究は実は数が少ないです。初心者に限り、HIITのボリュームを上げたり、スプリントの時間を短くするといった効果が見られたようですが、筋トレなどで実際に普段よりもパワーが出る!といった実感につながるかどうかはわかりません (22, 23)。

②運動によって生じるアンモニアなどの副産物を効率よく除去できるという説

尿素回路はアンモニアを尿素に変えます。ですのでアンモニア除去効果があるとすればシトルリン・アルギニンになります。NO3はこの場合関係がないです。

③成長ホルモンを増やすという説

ラットで行われた実験で、NOの合成を一部阻害すると成長ホルモン放出ホルモンの値が下がるという結果があります (24)。しかしこれが人間で当てはまるか、NO3の摂取で成長ホルモン量が上がるかはなんとも言えません。

そもそも根本的に、多少の成長ホルモン量の変化が筋肥大にプラスでない可能性が今は示唆されています(詳しくはAthletebodyさんのブログでhttps://athletebody.jp/2018/03/01/hypertrophy-hormones/)。

以上のことを総合すると成長ホルモンを増やすためにNO3を摂取するのはどうかな…と思います。

④疲労回復にいいという説

疲労回復というのはどうやら①で解説した「運動持久力の増加」に伴う疲労軽減が言われていることが多いようです。

⑤免疫力を上げるという説

残念ながらNO3の摂取が免疫力向上に役立つという説はあまり支持されていません。

確かに免疫細胞がNOを分泌することで細菌などを殺すという生理現象はあるようですが、そのプロセスは免疫システムによって綿密に制御されています。いくらNO3を摂取しても免疫細胞がNOをもっと分泌するといったことはないのかもしれません。

NO3の摂取量はどのくらいが最適?

ではこのNO3、一体どのくらい摂取すれば効果が期待できるのでしょうか?

まずわかりやすいように

「筋肉を動かす際のパフォーマンスをあげること=運動効率」

「筋力を落とすことなく筋肉を動かすことができる時間=運動持久力」

と定義します。

様々な実験結果をまとめると、NO3は一度に310 – 527 mgを摂取すると、運動効率を上げられるのではないかと言われています。これは運動前(1時間前)の摂取で効果が出て、日々の摂取をしている必要はありません。

一方運動持久力をあげるためには継続的な摂取が必要かもしれません。15日間以上322 mg以上のNO3を摂取してやっと持久力改善効果が出たという報告があるからです(25)。もし、持久力アップのために摂取をするのであれば日々NO3を摂取しても良いかもしれません。

継続して摂取していると効かなくなってしまうのではないか?と思うかもしれません。
これに関してはまだ結論づけることができませんが、15日間継続して摂取しても効果が減ることはなかったという報告はあります。大会などの大事な期間中は継続して摂取してもいいかもしれません。

また、パフォーマンスをより確実にあげるためには、この範囲の上限である527 mg以上の摂取を目指しても良いと思います(26, 16, 27, 28, 25)。

ではこの量のNO3をどのように摂取すればいいでしょうか?

NO3の効果を試したほとんどの研究がビートルートジュースかNO3のパウダーを利用していますが、ビートルートそのもの、またはホウレン草にも多く含まれているのでホウレン草を摂取しても良いと思います。
パフォーマンスをあげると言われている量を摂取するには、ビートルートもしくはホウレン草を200 g食べると良いと言われています(29)。

他にはどんな食材にNO3は含まれているのでしょうか?次はそれをみていきましょう。

NO3は一体どんな食べ物に入っている?

通常の食事からはヨーロッパ人は31 -185 mg、アメリカ人は40 – 100 mgのNO3を1日に食べていると言われています(30)。

NO3は食物繊維の多い野菜に多く含まれているといわれますが、具体的にどの程度含まれているでしょうか?
野菜1 kgあたりに含まれるNO3の量をまとめましたので参考にしてください。

ビートルート 644 – 1,800 mg/kg
ハツカダイコン 1,600 – 2,600 mg/kg
アルグラ 2,597 mg/kg
ほうれん草 65 – 4,259 mg/kg
レタス 970 – 2,782 mg/kg
ルッコラ 4,474 mg/kg
白菜 1,040 – 1,859 mg/kg
キャベツ 333 – 725 mg/kg
きゅうり 151 – 384 mg/kg

(Examine.comより)

あまり親しみのない野菜が多いですね。

NO3を摂取する方法としては、アメリカではビートルートをジュースにしたものがよく使われますが、ビートルートは日本ではあまり人気の食材ではありません。
アルグラもイタリア料理などではサラダによく使われますが、これも日本ではあまり人気の食材ではありません。
また、ハツカダイコンやルッコラも大量に食べるような野菜ではないでしょう。

よって、野菜から摂取するとすればほうれん草から摂取するのが最も効率が良いのではないかと思われます。

ではこのNO3、たくさん摂っても大丈夫なのでしょうか?
前の記事で述べたようにNO3を摂取すると一部がNO2に変換されます。
このNO2には発ガン性があるのではないかと昔よく言われていました。
皆さんも「肉の保存料として使われている亜硝酸ナトリウム(NaNO2)には発ガン性があるから保存料の使われてない肉がいい!」という話を聞いたことがあると思います。
ですが、本当に我々が食べる範囲で発がん性があるのかは不明なところがありますし、ここ数年でNO3はむしろ健康を考えて積極的に摂取した方がいいと言われています(31)。

久しぶりの更新になりましたが、今日は以上です!
紹介しきれていない論文など知っている方がいたらぜひコメントやLINEやTwitterで連絡をください!

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(参考文献)

  1. Cermak NM, Gibala MJ, van Loon LJ. 2012a. Nitrate supplementation’s improvement of 10-km time- trial performance in trained cyclists. Int. J. Sport Nutr. Exerc. Metab. 22:64–71
  2. Cermak NM, Res P, Stinkens R, Lundberg JO, Gibala MJ, et al. 2012b. No improvement in endurance performance after a single dose of beetroot juice. Int. J. Sport Nutr. Exerc. Metab. 22:470–78
  3. Porcelli S, Ramaglia M, Bellistri G, Pavei G, Pugliese L, et al. 2015. Aerobic fitness affects the exercise performance responses to nitrate supplementation. Med. Sci. Sports Exerc. 47:1643–51
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  8. Nyakayiru JM, Jonvik KL, Trommelen J, Pinckaers PJ, Senden JM, et al. 2017b. Beetroot juice sup- plementation improves high-intensity intermittent type exercise performance in trained soccer players. Nutrients 9(3):314
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  29. Hord NG, Tang Y, Bryan NS. 2009. Food sources of nitrates and nitrites: the physiologic context for potential health benefits. Am. J. Clin. Nutr. 90:1–1
  30. Hord NG, Tang Y, Bryan NS. 2009. Food sources of nitrates and nitrites: the physiologic context for potential health benefits. Am. J. Clin. Nutr. 90:1–10
  31. Bryan NS, Ivy JL. 2015. Inorganic nitrite and nitrate: evidence to support consideration as dietary nutrients. Nutr. Res. 35(8):643–54

 

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