プロテインシリーズ④:良質なタンパク質とは

さて、プロテインシリーズも第4弾になりました。

プロテイン①:プロテインってなんぞや?

プロテインシリーズ②:ホエイとカゼイン

プロテインシリーズ③:プロテインのアミノ酸組成

これでシリーズもの一旦終了です!!
今日は、プロテイン・高タンパク質な食事に関する、皆が一度は抱いたであろう疑問について答えようと思います。

1、”良質なタンパク質” ってよく言うけど、一体それって何?
2、ホエイ、カゼインら乳由来のタンパク質に比べてソイってどうなの?
3、タンパク質を大量に摂取したとして、全部吸収されて筋肉合成に使われるの?
という疑問がこの記事で解決されると思います!!

まずは”良質なタンパク質”ってなんぞや?ってところです。
一般的に良質なタンパク質とは、必須アミノ酸を多く、かつバランスよく含んでいるタンパク質だと言われています。
なぜバランスよく含んでいることが大事かというと、一つでもアミノ酸が足りないと体内でタンパク質合成が効率よく行われないからです。

必須アミノ酸は哺乳類が体内で合成できないアミノ酸のことです。
一般的に20種類のアミノ酸のうち9種類が必須アミノ酸です。
植物や微生物は必須アミノ酸を合成する代謝経路を持っていますが、哺乳類は持っていません(必須アミノ酸を合成する経路は複雑で、かつ食べ物から十分に摂取できるので進化の過程で合成代謝経路がなくなったと言われています)。
よって我々哺乳類は必須アミノ酸を食品から摂取する必要があります。
ではその必須アミノ酸をバランスよく含んでいる食品の基準は何でしょう?

その基準として、いわゆるアミノ酸スコアというものをみなさんご存知だと思います。

例えばこれは某社のホエイプロテインの袋の裏に書かれている成分表。
アミノ酸スコア=100
と書かれているのがわかりますね。

この日本で使われているアミノ酸スコア、一体どういうものかというと

タンパク質を構成する窒素1gあたりに占める各必須アミノ酸の量 ÷ FAOが設定した基準値
で計算されます。
ちょっと難しいですけど、”簡単”に言えば
食品に含まれている必須アミノ酸の量 ÷ 基準値
で計算されるということです。
これを各アミノ酸ごとに計算してその最低値をアミノ酸スコアとします。

例えば牛肉のアミノ酸スコアを計算して

牛肉に含まれているロイシン ÷ ロイシンの基準値 → 120%
牛肉に含まれているイソロイシン ÷ イソロイシンの基準値 → 90%
・・・
牛肉に含まれているヴァリン ÷ ヴァリンの基準値 → 80%
(数値は例です)

となった場合、最低値の80を牛肉のアミノ酸スコアとするわけです。
そして、アミノ酸スコアの上限は100に設定されているので、すべてのアミノ酸が100を超えていればアミノ酸スコア=100となります。
この1985年に設定された形式のアミノ酸スコアですと、ホエイもカゼインもソイもスコアは100になります。
しかしこのアミノ酸スコア、実は重大な欠陥があります。
一つとしては、食品の消化効率が考慮されないこと。
そして、100以上のスコアの食品同士の比較ができないこと。

これらの欠点を改善すべく、1993年にPDCAASというタンパク質の評価方法が提唱されますが、それも2013年に新たに提唱されたDIAASという評価方法に取って代わられつつあります。
このDIAAS (Digestable Indispensable Amino Acid Score)という新たなタンパク質評価は以下のように計算されます。

食品タンパク質1g中の、消化される必須アミノ酸の量 ÷ 基準値
このスコアの新しいところは
1、小腸の末端にどれぐらい吸収しきれなかったアミノ酸があるかを測定し、消化効率を決めている。
2、100以上の値を認めている。
という点にあります。
いろいろ難しいことを言いましたが、簡単にまとめると
1、今日本で使われているアミノ酸スコアだとタンパク質の消化されやすさを考慮していないし、スコアも100以上が存在しない。
2、新しく採用されたDIAAS基準だとタンパク質の消化性も考慮されるし、スコアも100以上が存在する。
ということです!
そしてこのDIAAS基準を使うと

ホエイのスコア = 97.3 〜 109%
ソイのスコア = 89.8 〜 90.6%

となるのです。

ホエイの方がソイよりも高い値になっていますね!

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Rutherfurd, S. M; Fanning, A. C; Miller, B. J; Moughan, P. J (2014). “Protein Digestibility-Corrected Amino Acid Scores and Digestible Indispensable Amino Acid Scores Differentially Describe Protein Quality in Growing Male Rats”. Journal of Nutrition145 (2): 372–9.
————–

つまり最新のDIAAS基準でアミノ酸スコアを計算すると、ソイなどの植物由来タンパク質に比べて、ホエイなどの乳由来のタンパク質は高品質であることがわかるのです。
以上のことを考え、僕ら兄弟は植物由来のソイプロテインよりも、乳由来のホエイ・カゼインプロテインを摂取することをおすすめしています。
また、ソイタンパク質はイソフラボンが入っているか女性にはいい!という話もよくみますが、ソイプロテインを摂取しても女性ホルモン量に影響は出ないという結果があります。

さて、最後にタンパク質を大量に食ったとして、全部吸収されて筋肉に使われるの?という疑問について答えようと思います。

これに関しては、答えだけ先に言うと、NOです。

考えうるアミノ酸吸収を制限するファクターとしては

1、消化効率
2、小腸でのアミノ酸・ペプチド吸収速度
があります。

消化効率は、食事の際の腹の空き具合(ホルモンバランス)、何を何と一緒に食べたか、によって変わります。
完全に胃・小腸でアミノ酸に分解・吸収されなかったタンパク質は、大腸の細菌に使われてしまったり排泄されたりします。タンパク質をいっぱい食べてオナラが臭くなるのは、消化吸収しきれなかったタンパク質を腸内細菌が代謝することにより硫黄が発生するからです。
また、小腸でアミノ酸・ペプチドを吸収するトランスポーターも、大量のアミノ酸存在下ではすべてのアミノ酸を吸収できない可能性もあります。
そして、根本的な問題として、吸収されたアミノ酸がすべて筋肉合成に使われるというわけでもありません。
アミノ酸は常に糖質に変換され、エネルギー源として利用されます。
では一体どれぐらいなら一度に吸収され、筋肉合成に利用されるのでしょうか?
これについては諸説あるので具体的にこれだ!!という数字を提示することはできません。
ですが、筋トレ界で有名な筋肉博士である石井直方先生が面白いコラムを最近書いています。

タンパク質の摂取を増やせば増やすほど、筋肉が増えるわけではない!

この記事によると、

”これは普段の食事だけでなく、トレーニング後のプロテインの補給でも同様で、どんな状況であっても基本的には20gがタンパク質量の上限値であるようです。(中略)40~50gの量を摂っても吸収はされますが、それが筋肉の材料になっているわけではなく、余分なものはエネルギー源として燃やされてしまいます。(中略)そうなるとプロテインも不要ということになってしまいますが、タンパク質は合成を上げるスイッチでもあるので、20~30gを一日に複数回摂るためには便利で効果的な手段と言えます。ただ、あまり多くの量を摂る必要はないと考えていいでしょう。”(記事より引用)

と、書かれています。数字に関しては引用がないので、なんとも言えないですが、明らかに吸収されたタンパク質がすべて筋肉の材料になるわけでないことを明言しています。
また、最近のPhillip博士によるレビューでも食事で摂取したタンパク質が全て吸収されるわけではない・吸収されたアミノ酸がすべて筋肉合成に使われるというわけではないということを詳細に解説しています。

Recent Perspectives Regarding the Role of Dietary Protein for the Promotion of Muscle Hypertrophy with Resistance Exercise Training.

以上、いかがでしたでしょうか?

ポイントをまとめると

1、”良質なタンパク質” とは必須アミノ酸をバランスよく含んでおり、かつ消化・吸収がされやすいタンパク質のこと。

2、最新のDIAAS基準を用いると、ホエイ、カゼインら乳由来のタンパク質に比べてソイはタンパク質の品質がよくない。

3、タンパク質を大量に摂取したとしても、全部吸収されるわけではないし、吸収されたアミノ酸も一部しか筋肉合成に利用されない。

でした。じゃあどうやってプロテインを飲むのが一番いいと言われているの?についてはまた別の記事で…

 

 

 

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